2025.11.14
**脳梗塞後の立ち上がりがうまくいかない… “装具の安心に頼りすぎない体”を取り戻すリハビリの実例**
滋賀県守山市にあります自費リハビリ施設「脳梗塞リハビリステーション滋賀」の小林です。
「装具を外したい。でも、不安がある。」
そんなお声を、本当にたくさん耳にします。
・装具がないと歩けない気がする
・つま先が引っかかりそうで怖い
・夜中の移動に自信がない
・そもそも外していいのか分からない
その“揺れる気持ち”には、理由があります。
今回は、同じような思いを抱えていた方が、
ひとつ一つ、自分の足の力を取り戻していった物語をご紹介します。
「装具なしで立つなんて、とても無理だと思っていたんです。」
そう話してくださったのは、
脳梗塞から4年が経つ60代の方です。
装具をつければ、杖なしで歩くことができる。
けれど今年に入り、少しずつ“バランスの変化”を感じるようになりました。
特に立ち上がり。
今まで普通にできていた動作でしりもちをつくことが増え、
「なんかバランスが悪いんです」と不安を抱え、夏にリハ滋賀へ来所されました。
■「装具なしで立つの!?そんなことできるの?」
最初に装具を外すリハの話をしたとき、
ご利用者様は驚いていました。
もちろん、すぐに挑戦するわけではありません。
長い年月、装具という“安心”に頼ってきた足は、
硬さやこわばりが蓄積し、
自分の体重をしっかり受け止める準備が整っていないことが多いのです。
そこでまずは
装具に馴染んでいた足部を丁寧にほぐし
足底の感覚を取り戻し
座位でゆっくり足へ体重をかける練習へ。
足の裏が床をとらえる感覚が戻ってくると、
立ち上がりは少しずつ安定していきました。
■ 立ち上がりが整うと、言葉が変わる
足に体重が乗りやすくなると、
ご利用者様の表情にも変化が出てきました。
そしてある日、ぽつりとこう話されました。
「そのうち、装具とれて歩けるかな?」
最初の頃は考えもしなかった未来の話。
この言葉は、身体だけでなく“心の変化”が始まった合図です。
■ 夜中のトイレ…最大の不安
ご利用者様がもう一つ気にしていたのが、夜間の移動でした。
「夜中、トイレに行くときに装具をつけないと、怖いんです。」
脳卒中後の生活で夜間の一歩は、とても大きなリスクになります。
装具がないと
・寝起きでバランスが不安定
・足が思うように上がらない
・つま先の引っかかり
そして「夜間のトイレの度に装具を毎回つける大変さ」もあります。
この不安をどう減らしていくかが、大きなテーマでした。
■ 装具でも裸足でもない、“ちょうどいい間”の選択
そこで提案したのが、
スポーツ用サポーター 「ザムスト」 を使う方法でした。
装具と裸足の間を埋めるために、
今回はスポーツ用サポーター「ザムスト」を使用しました。
(こんな形のサポーターです👇)

■ ザムストに変えた日、立ち上がりが劇的に変わった
装具のときは、
良い方の足を引いて立ち上がる癖がありました。
しかしザムストに変えると、
両足をそろえて立ち上がれる
一度だけでなく何度も安定して立てる
下肢の支持性が高まる
身体が“自分の足で立つ感覚”を思い出していくようでした。
■ 「歩けそう」
そして、実際に歩いてみると…
つま先が、引っかからない。
一歩、また一歩。
ご本人の表情が明らかに変わっていきました。
「歩けた。」
「これから、これ使って練習したい。」
その言葉には、久しぶりに感じた“未来への期待”がにじんでいました。
■ 今日の一歩は、“夜中の安心”につながっている
ザムストでの成功は、
ただ歩けたという喜びだけではありません。
ずっと抱えていた
「夜中のトイレを、装具なしで安全に行きたい」
という願いが、
現実に近づいた瞬間でした。
足の裏で支える感覚
両足で立つ安定感
一歩目の迷いが減る
自分の身体への信頼が戻る
これらすべてが、
**“暮らしの中の不安を減らす力”**につながっています。
リハビリは、
ただ動きを取り戻すだけではなく、
日常で困らない力を少しずつ育てていくこと。
今日の一歩は、その未来につながる確かな一歩でした。
■ お問い合わせ
暮らしの中での不安や、
「これってどうしたらいいの?」というお悩みがありましたら、
いつでもお気軽にお電話やこのホームページのお問合せフォームからご相談ください。
お話をうかがうだけでも大丈夫です。

2025.11.11
「右手を使いたい」から「右手と生きたい」へ
滋賀県守山市にあります自費リハビリ施設「脳梗塞リハビリステーション滋賀」の小林です。
l今回はあるご利用者様の心の変化についてご紹介したいと思います。
■リハビリをはじめた当初の想い
リハビリをはじめたときは、
「ただ、指を曲げることができればいい」
と話されていたご利用者様。
けれど、続けるうちに、
少しずつ変わっていったのは——
“目標”ではなく、“考え方”でした。
■チャックを上げる、その小さな動作に宿る回復
この日のリハビリの最後は、
両手をつかって、ベストのチャックを上げること。
左手でスライダーを引き上げる。
そのためには、麻痺した右手で布地をそっと押さえる。
右手で押さえることができるからこそ、
スライダーはまっすぐ上がっていく。
チャックが上がった瞬間、
「おーっ」と思わず声がもれました。

■“支える・添える・感じる”という手の働き
ただ握る力だけではなく、
支える・添える・感じるという大切な手の働き。
感じて、動けるからこそ、
手は“使える”ようになり、
“自分の体の一部として生きていく”のだと思います。
■手を良くするには、“手だけ”を動かすのではなく
ご利用者様はリハビリを続けるうちに、
「手を良くするには、“手だけ”を動かしてもダメなんですね」
と気づかれました。
脳卒中による片麻痺の方にとって、
肩、腕、手首の安定性、足の支え、体幹の力——
そのすべてが、手の“使いやすさ”を支えています。
麻痺側の足にしっかり体重を乗せる練習をしたあと、
「腕が軽い、歩きやすい」と笑顔で話されるその表情に、
体がつながっていく喜びがにじんでいました。
■暮らしの中で“手とともに生きる”リハビリ
チャックを上げるほんの数秒。
その小さな動作の中に、
積み重ねてきた時間と努力が宿っています。
“手を動かすこと”がゴールではなく、
“手と一緒に生きていくこと”がリハビリの目的。
今日もまた、暮らしの中で
小さな「できた」が光っています。
その笑顔に出会えることが、
私たちのいちばんの喜びです。

2025.11.06
「起き上がる」って、こんなにも大変。 ― 重さを感じさせず、“動き出す力”を引き出すリハビリを求めて ―
滋賀県守山市にあります自費リハビリ施設「脳梗塞リハビリステーション滋賀」の小林です。
先日、勉強会で片麻痺の方を想定した寝返り・起き上がり動作の体験を行いました。
リハ滋賀でもスタッフ全員で、「感じて、考える」時間として共有しました。
◆ 鍼灸師・草川さんの体験
まず体験したのは、鍼灸師の草川さん。
左手と左足に重りをつけ、ベッドの左側半分を外に出して、
脳卒中で左片麻痺になった方の寝姿勢を模擬します。
最初のひとことは――
「落ちそう」「重い……」

そこから寝返り、起き上がりに挑戦。
「え?」「どうやるの?」「無理……」と、思わず言葉がもれます。
右手と右足をめいっぱい使って、何とか体を起こそうとするものの、
「腰が痛い」「肩がしんどい」――動作のたびに体の悲鳴が聞こえました。
1回、2回と繰り返すうちに、3回目にはもう「無理」「しんどい」とぐったり。
「1日に何回もこんな動作をしていたら、心が折れる。起き上がるのがつらいなら、動きたくなくなってしまう」
と、率直な感想を話してくれました。
◆ 私(小林)の体験
次に、私自身も体験しました。
重い手足、不安定な体。
動こうとしても、重りがまるで抵抗運動のように働き、身体が言うことを聞かない。

使える側の手足をフルに使って、なんとか寝返り、起き上がり。
かかった時間は33秒。
通常の起き上がりよりも、はるかに長い時間です。
その33秒の間に感じたのは、
普段、手足や体の重さを感じずに「動けていること」が、どれほどすごいことなのか。
そして、「手足が重い」という状態が、
いかに日常動作を難しくするかという現実でした。

◆ 重力の中で生きる私たち
地球では、重力下で生きることが大前提。
私たちは日常の中で、知らず知らずのうちに
重力に抗い、重力に従いながら動いています。
その環境で「自分の手足や体が重い」ということは、それだけで大きな負担。
だからこそ、少しでも手足や体を軽く感じられるように整えることが、
“動きやすさ”と“やる気”を取り戻す第一歩になります。
◆ “重さを感じさせない”アプローチ
体験の最後に、草川さんには**「手の重さを感じさせず、軽く感じられるようにする起き上がり」**を再度体験してもらいました。
手や指から丁寧に感覚入力を行い、
上肢の重さを軽く感じられる状態に整えたうえで、
リーチ(手を伸ばす動き)から寝返り・起き上がりへとつなげます。
すると、腕がふっと軽くなり、
自分で体を動かす感覚が戻ってくる。
結果として、良い方の手で「引っ張る」といった強い代償ではなく、
自然で機能的な動きが生まれました。
草川さんの感想は――
「すごく楽。変な力も入らないし、手のがんばりもいらない。」
そして、少し間を置いて、
「この楽な起き上がりができたら、泣く方が少なくなると思う。」
と静かに話されました。
◆ “動き出す力”を引き出すリハビリ
この一言には、リハビリの本質が詰まっています。
力で動かすのではなく、
軽く感じられる身体を整え、ご本人の中にある“動き出す力”を引き出す。
それが、私たちが目指すリハビリのかたちです。
感覚を通して、重さがふっと軽くなり、
そこから自然に生まれていく動き。
それは、私たちが「動かした」からではなく、
ご本人の中にある“動く力”が引き出された瞬間。
リハビリとは、
その力を感じ、導く営みなのだと改めて感じました。
◆ おわりに
軽く感じられる身体は、心も前向きにする。
動きが生まれる瞬間には、笑顔が生まれる。
Body and mind, more active.

2025.10.30
「高いからこそ、迷う。でも、その迷いの先にあったもの。」
滋賀県守山市にあります自費リハビリ施設「脳梗塞リハビリステーション滋賀」の小林です。
「おたくは、お値段高いですよね。」
このお言葉をよくいただきます。
自費リハビリは、どうしても“高額”です。
1回1〜2万円、月にすると数万円から十数万円。
「もし効果がなかったらどうしよう」という不安は、誰にでもあります。
でも実際に体験された方の言葉の中には、
その不安の奥にある“本当の想い”が見えてきます。
■退院後の不安と迷い
あるご利用者さまが、こう話してくれました。
「退院するときに、お医者さんやリハビリの担当者からは
『今後もリハビリはつづけてください』と言われました。
でも、どこで、どんなリハビリができるかは教えてもらえなくて。
家族がいろいろ調べてくれて、こちらを見つけてくれたんです。
体験を受けるまでは本当に不安でしたけど、
今は“もっと早く知りたかった”と思います。」
この言葉には、
“続けたいのに、つづける場所が見えない”という退院後リハの現実と、
“自分らしくで生きたい”という強い願いが詰まっています。
■「損したくない」よりも、「希望を失いたくない」
心理学でいう“プロスペクト理論”では、
人は「損をする痛み」を避けようとする傾向があるといわれます。
でも、自費リハビリを選ぶ方の多くは、
“お金を失いたくない”のではなく、
“もうこれ以上、できなくなる自分を見たくない”という想いから一歩を踏み出されています。
■不安を希望に変えるには
不安をきれいに消すことは難しいかもしれません。
けれど、**「体験を通して、変化を感じること」**が
その不安を希望に変えるきっかけになります。
「ここなら自分に合いそう」と感じられる体験
「専門職がちゃんと見てくれている」という安心
「この先にできるようになるかもしれない」という期待
それが、“高額”の意味を“価値”に変えていく瞬間です。
■最後に
「高いからこそ、失敗したくない」
その気持ちは、誰にでもあります。
でも、金額以上の“希望”を感じられたとき、
それはもう“支出”ではなく、“投資”になります。
私たちは、
“もう一度、自分らしく生きたい”という想いを、
一緒に形にしていきたいと考えています。
「次の一歩」は誰でもとても勇気のいること。
迷いながらでも大丈夫です。
体験の中で、一緒に”これから”を見つけていきましょう。

2025.10.29
装具の形になった足――感じる力を取り戻すリハビリ ― 足が再び“自分のもの”になっていく過程 ―
滋賀県守山市にあります自費リハビリ施設「脳梗塞リハビリステーション滋賀」の小林です。
脳梗塞リハビリステーション滋賀に来られる方の多くは、
「せめて部屋の中では装具を外したい」
「できれば、装具なしで歩けるようになりたい」
と話されます。
“装具を使うかどうか”は、単なる道具の問題ではなく、
自分の足で生きていきたいという願いの表れです。
■装具の形になった足
リハビリの現場では、装具を長く使っている方の足が、
まるで装具の形のまま固まっていることがあります。
内反気味で、足首や中足部の動きが少なく、
足全体がひとつの“かたまり”のようになってしまう。
これは、安全を守るための固定の結果でもあります。
けれど、その状態では、足が本来もっている
小さな“たわみ”や“ゆらぎ”――アクセサリームーブメントが失われてしまうのです。
■アクセサリームーブメントとは
立ったり歩いたりするとき、足はわずかに動きながら
バランスを取っています。
これが、アクセサリームーブメント。
意識して動かせるものではなく、
関節や筋、皮膚が感じ取りながら自然に出る“微細な動き”です。
装具を長く使うと、この動きが出にくくなり、
バランスを取るときに不利な体になってしまいます。
■足から情報を取り込める準備を
アクセサリームーブメントは随意的に出せません。
だからまず、足を整えることが大切です。
足関節や足部のモビライゼーション
皮膚・筋膜の粘弾性を高めるタッチ
足底・足背へのやさしい感覚入力
これらを通して、足から情報を取り込める準備をつくります。
足が感じ取れるようになると、立ったときのふらつきが減り、
洗面所やお風呂など日常の立位場面でも安定しやすくなります。
そして、高座位などで対称的に立てる環境を整え、
短時間でも装具なしで立つ練習へ。
少しずつ、足の裏から感覚が戻ってくると、
過敏さが減り、お風呂のときに足趾がギュッと曲がる反応も減っていきます。
■装具をつけても歩きが変わる
不思議なことに、
装具を外して足を整える練習をすると、
装具をつけて歩いたときの歩き方も良くなることがあります。
「足が軽い!」
「前に出やすい!」
そんな言葉を聞くたびに、
“足が再び自分の足として働き始めたんだな”と感じます。
■真ん中を見つけるリハビリ
装具は、難しい問題です。
安全を守ってくれる一方で、
からだの働きを制限してしまうこともある。
「外すべき」「外さないべき」と
白黒つけることはできません。
大切なのは、真ん中を見つけること。
その人にとっての“ちょうどいい支え方”を、
一緒に探していくことだと思います。
装具があることで動けるなら、それでいい。
装具を外すことで、自分の足を感じられるなら、それもいい。
どちらの選択にも意味があります。
大切なのは、本人が納得して選ぶこと。
そして私たちは、その選択を支える存在でありたい――
それが、リハ滋賀のリハビリです。

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