2020.05.15
きっかけ てがかり
滋賀県守山市にあります保険外リハビリサービス「脳梗塞リハビリステーション滋賀」の作業療法士の小林です。
「麻痺側の足へ体重をのせたいのだけど、わからない。」
「自分では麻痺している方に体重をのせているつもりなんだよね。」
ご利用者様からよくそのようなお話を伺います。
立位で麻痺側へ体重をのせようとしたり、左右の足均等に体重をかけようとしても、なかなか難しいですよね。
わからないから、例えば目で足元をみたり、ガラスや鏡に映った姿を見て確認したりしがちです。
しかし、目を使って足やご自身の姿を確認してまうと、麻痺側からの足の情報が感じにくくなってしまうかもしれません。
姿勢をコントロールするためには、感覚情報が必要となります。
必要な感覚情報は、
目で物をみる感覚の「視覚」
自分の身体の傾きやスピード、回転を感じる「前庭覚」
自分の身体の位置や動き、力の入れ具合を感じる「固有受容感覚」となります。
文献では、健常者であれば、安定した立位には視覚や前庭覚はほとんど必要とされずに、主に固有感覚受容感覚情報をもとにした姿勢コントロールがされるとのことです。
脳卒中後遺症の方の場合は、筋肉の弱化や感覚障害等の問題により「固有受容感覚情報」での姿勢コントロールが苦手となってしまいます。
そうすると、視覚や前庭感覚に依存しやすくなります。
足もとをみながらの歩行(視覚依存)、頭頚部や眼球を過剰に固定した姿勢(前庭依存)などのパターンになりやすい傾向があります。
そのような状態では麻痺側の足に体重をのせるのは、難しいのかなと臨床を通して感じました。
麻痺側の足に体重をのるための「手がかり」があるといいのかなと思いました。
そこで、「お手玉」「大豆」等様々な物を使用して「きっかけ」「手がかり」を試しました。
一番実感がありましたのは
「麻痺側の足の小指側に小ペグを入れる」ことでした。
作業療法の物品で「ペグ」があります。
その小ペグを麻痺側の足の小指側に入れます。
小指側に小ペグがあることで、麻痺側の足に体重がかかるとペグの圧を感じることができます。
このペグの圧を手がかりとして麻痺側の足に体重をかけることを繰り返します。
非麻痺側の方に体重が偏ると、麻痺側の足の小指側にあるペグの圧の感覚が弱くなります。
その圧の感覚をご利用者様自身でモニタリングし、麻痺側の足に体重がのっているかどうかをご自身の感覚を使用して確認します。
実際に行っていただいた方のお話です。
「足の裏になにもない状態だと、ガラスに映った自分の姿で姿勢を確認していた。」
「足の小指側にこれ(小ペグ)があると、それが手がかりとなってこちら(麻痺側)に来るのが分かる。」
「自分で(麻痺側)にこれる、こちら(麻痺側)があるのがわかる。」
「ここがまっすぐだと、いつも自分はいい方へよっていたんだね、気づかなかったよ。」
麻痺側の足へ体重がのる手がかりがあったことで、ご自身で麻痺側への支持基底面をアクティブに作ることができたようです。
しかし、リハビリでは小ペグがありますが、ご自宅ではありませんよね。
そのため、ご自宅では「鉛筆」を代用して、練習を行っていただいてます。
小ペグと同じように麻痺側の足の小指側に入れます。
その方の状態に応じて
「立ち上がり前にしっかり麻痺側の足に体重をのせる。」
「立位で麻痺側の足に体重をのせる。」
等の課題を行っていただきます。
ご自宅で行う際の注意点は以下があげられます。
麻痺側の足に浮腫みがある方は、痕になりやすいので、ごく短時間で行うこと。(1分行ったら、痕を確認する等)
感覚障害がある場合は傷をつけてしまう恐れがあるので、素足ではなく靴下を履いて行うか、ご家族様と一緒に行う。(糖尿病の持病がある方も同様です。)
鉛筆が削ってある場合は、鉛筆の芯が皮膚を傷つけてしまう恐れがあるので、キャップを使用すること。
練習を行った後は、傷がついていないか必ず確認をする。
行った際に痛みが出現した場合は中止する。
ご自身一人で不安がある場合は、ご家族様等どなたかと一緒に行う。
立ち上がりも、立位も万が一の転倒を考え、何かにつかまって行う。
「脳」は正しい「感覚」が入力されないと「効率の良い運動」を出力することが難しくなってしまいます。
「脳」は常に「感覚」を欲しがっています。
損傷された「脳」も「感覚」を欲しがっています。
ご自身で感覚を「感じる」ことができると、少しづつ動きも変化するかもしれないですね。
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