2025.12.03
麻痺側の腕は「ふにゃっと」する理由。必要なのは力じゃなくて準備
滋賀県守山市にあります自費リハビリ施設「脳梗塞リハビリステーション滋賀」の小林です。
最近、 回復期病院から退院してこられたばかりの方と関わっていると、
このような状態によく出会います。
✔ 指先は少し動くのに、腕は支えられない
✔ 肩が落ちて重く感じる
✔ 亜脱臼がある
✔ アームスリング・三角布が手放せない
ご本人様やご家族様からは、こんな質問を沢山いただきます。
「筋力がないから、腕が落ちてしまうんですか?」
「動かしていないから、支えられないんですか?」
「スリングは、ずっと着けておいた方がいいんですか?」
不安な気持ちのまま、どうしたらよいかわからなく、戸惑っておられる方は少なくありません。
これは単純に筋肉が弱っているから、筋力がないから起こっているわけではありません。
もっと深く、脳と身体の仕組みが関わっています。
■なぜ麻痺側の腕は「ふにゃっと」してしまうのか?
私たちの身体は、本当は「動く前」に、重力に対して体を支え、安定させています。
また動く前の準備もしています。
それらは、
身体を支え安定させる筋肉が働くことで生まれます。
そしてこの働きが、動作の土台になります。
ところが、脳卒中では「脳の損傷により」
この”体を支え・安定させる””動く前の準備”の神経回路が上手に働かなくなります。
そうすると、体幹・肩甲骨・上肢まわりの筋肉が重力に対して身体を支えられなくなります。
その結果、
・腕がふにゃっと、ぶらんとぶら下がる
・肩が落ちる
・亜脱臼が起こりやすくなる
・腕が重くてつらい、しんどい
といった状態につながります。
つまり、
単純に”動かない腕”ではなく、
自分の腕の重さをコントロールする、支えるための準備がまだ入らない腕。
これが、低緊張のある麻痺側上肢に多く見られる特徴です。
■では、どう働きを取り戻していくのか?
そこで大切になるのが——
**ウェイトベアリング(荷重入力)**です。
ウェイトベアリングとは、
手や腕で体重を支える姿勢をつくること。
ただ机に手を置くだけではなく、
手・肘・肩・体幹に体重がのることが大切です。
ウェイトベアリングの中で身体に起こることは、大きく3つあります。
① 手や腕から脳へ情報が届く
「触れている」「支えている」「重さがある」という感覚が戻る。
② 無意識の筋活動が生まれる
支えようとする力が自然に働き、
身体が“思い出すように”動き始めます。
③ 手がもう一度身体の一部として統合される
脳が「この腕を使うんだ」と再び認識するようになります。
これは、力まかせのトレーニングではありません。
「思い出していく」
「つながり直す」
——そのためのアプローチです。

■実際に変化があったケース
今回の写真の方は、最初亜脱臼が2横指あり、
アームスリングを常に着けて生活されていました。
ご本人様も、
「このまま一生スリングなのかな…」
と不安を抱えておられました。
しかし、週2回のリハビリと、ご自宅で取り入れていただいた
無理のない範囲のウェイトベアリングの積み重ねにより、
少しずつ身体に変化が現れました。
・肩が落ちにくくなる
・体幹と腕がつながる感覚が出てくる
・腕が軽くなった
・手が「自分の手」として戻る感覚が生まれる
・腕が軽くなって歩きやすい
いまでは亜脱臼は半横指ほど。
そして、ついに——
アームスリングなしで生活できるようになりました。
これは「急にできるようになった」のではなく、
小さな積み重ねがゆっくり形になっていった結果です。
■おわりに
小さく見える一歩も、続けてきた時間も、
ちゃんと意味があります。
大切なのは、「できた」「できない」ではなく、
今日、その身体と向き合ったという事実。
その積み重ねが、これからの身体と暮らしを支えていきます。
慌てず、焦らず、丁寧に。
その一歩一歩で大丈夫です。
そしてもし迷う日があれば、
その一歩を、私たちもいっしょに支えていきます。

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